虫歯治療、日本の常識は世界の非常識?UCLAの根本治療が拓く未来

「痛くなったら歯医者さんへ」。日本では多くの人がそう考えているのではないでしょうか。しかし、この考え方こそが、虫歯治療を繰り返す負の連鎖を生み出しているのかもしれません。もし、虫歯の原因そのものにアプローチし、二度と再発しない根本的な治療法が存在するとしたら――。

近年、歯科医療の先進国であるアメリカ、特にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)では、虫歯を単なる「穴」として捉えるのではなく、バイオフィルムという細菌の塊によって引き起こされる感染症として捉え、その根本原因に迫る治療法が注目を集めています。本稿では、日本の一般的な虫歯治療の現状と比較しながら、UCLAが提唱する革新的なアプローチとその可能性を探ります。

 

日本の虫歯治療:対症療法からの脱却は?

日本の一般的な虫歯治療は、進行した虫歯の箇所を削り、金属やプラスチックなどの詰め物や被せ物で修復する、いわば対症療法が中心です。もちろん、これにより痛みは軽減され、見た目も改善されます。しかし、この治療法では、虫歯を引き起こした根本的な原因、つまりバイオフィルムの存在や、患者さん自身の口腔内環境へのアプローチが十分に行われていないケースが少なくありません。

その結果、治療した歯の周囲や、他の歯に新たな虫歯が発生するリスクは依然として高く、患者さんは何度も歯科医院に通い、同じような治療を繰り返すことになりがちです。これは、時間的、経済的な負担だけでなく、精神的なストレスにも繋がります。

 

 

UCLAが提唱する根本治療:バイオフィルムとの戦い

一方、UCLAをはじめとする世界の先進的な歯科医療機関では、虫歯を細菌感染症として捉え、バイオフィルムのコントロールを治療の中心に据えています。バイオフィルムは、複数の細菌が寄り集まって形成する膜状の構造で、歯の表面に強固に付着し、内部の細菌を薬剤や免疫細胞から守る難敵です。従来の削って詰める治療だけでは、このバイオフィルムを完全に除去することは困難です。

UCLAで行われている根本治療は、以下のような多角的なアプローチによって、バイオフィルムの除去と再形成の抑制を目指します。

  1. 徹底的な診断とリスク評価: 患者さん一人ひとりの口腔内環境を詳細に分析し、唾液の質や量、細菌の種類や数、歯の構造、生活習慣などを総合的に評価します。これにより、虫歯のリスクを正確に把握し、個別の治療計画を立てることが可能になります。
  2. 科学的根拠に基づいたバイオフィルム除去: 専門的な器具を用いた徹底的なクリーニングに加え、薬剤やレーザーなどを用いてバイオフィルムを効果的に除去します。患者さん自身による適切なブラッシング指導や、補助的な清掃用具の使用方法の指導も徹底的に行われます。
  3. 口腔内環境の改善: 虫歯の発生を抑制するために、食生活の改善指導や、唾液の分泌を促進するケア、フッ素の応用など、患者さん自身の口腔内環境を整えるための指導が行われます。
  4. 最小限の侵襲治療: 可能な限り歯を削る量を抑え、MI(ミニマルインターベンション:最小限の侵襲)の考えに基づいた治療を行います。これにより、歯の寿命を最大限に延ばすことを目指します。
  5. 定期的なメンテナンスと予防: 治療後も定期的なメンテナンスを行い、バイオフィルムの再形成を早期に発見し、コントロールすることで、長期的な健康を維持します。

日本の歯科医療への示唆:パラダイムシフトの必要性

UCLAの根本治療のアプローチは、日本の歯科医療に多くの示唆を与えてくれます。

まず、虫歯を単なる「穴」として捉えるのではなく、「感染症」として捉える視点の重要性です。これにより、治療の中心が対症療法から原因療法へとシフトし、より本質的な問題解決を目指すことができます。

次に、患者さん一人ひとりの口腔内環境に合わせた個別化された治療計画の必要性です。画一的な治療法ではなく、科学的な診断に基づいたオーダーメイドの治療こそが、再発を防ぎ、長期的な健康へと繋がる道筋となるでしょう。

そして、治療後の継続的なメンテナンスと予防の重要性です。虫歯は一度治療したら終わりではなく、その後のケアが非常に重要です。患者さんと歯科医療従事者が協力し、口腔内の健康を維持していくという意識改革が求められます。

根本治療実現への課題と展望

もちろん、日本でUCLAのような根本治療を普及させるためには、いくつかの課題があります。保険制度の違いや、患者さんの意識、歯科医療従事者の知識や技術のアップデートなど、乗り越えるべき壁は少なくありません。

しかし、近年、日本でも根本治療の重要性を認識し、積極的に新しい知識や技術を取り入れる歯科医師が増えてきています。歯科衛生士の役割も重要性を増しており、予防歯科の概念も徐々に浸透しつつあります。

今後、日本の歯科医療が、世界の先進的なアプローチを取り入れ、患者さん一人ひとりの口腔内の健康を長期的にサポートできる体制へと進化していくことが期待されます。

 

まとめ:未来の歯科医療は「治す」から「守る」へ

虫歯治療は、痛くなってから行くものではなく、痛くならないように「守る」時代へ。UCLAの根本治療が示すように、科学的な診断に基づいた原因療法と、患者さん自身の予防意識の向上こそが、虫歯に悩まされない未来を拓く鍵となるでしょう。日本の歯科医療も、このパラダイムシフトを加速させ、より多くの人々が生涯にわたって健康な歯を維持できる社会を目指していく必要があります。

UCLAの基本的なコンセプトは、虫歯によって失われた歯質を、生体親和性の高い材料で丁寧に封鎖し、細菌の侵入を防ぐとともに、歯髄の再生や象牙質の再石灰化を促す環境を整えることにあります。

よこやま歯科では、UCLAに基づいた治療の提案をしております。近年、インプラント治療などもありますが、基本は、虫歯になった時に根の部分に菌が行き届かないようにして、一度の治療で歯を少しでも長く健康にさせる事が、患者様が求められる事だと思います。出来るだけ自分の歯で健康を持続できるよう治療していきます。

 

歯のお悩みは、よこやま歯科へご相談下さい。

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